幸せて何でしょうか?

 

 

長年関わらせて頂いていた

Aさん

 

90歳という年齢、慢性的

膝痛を抱えながら何とか自宅で

過ごされていた

 

『手術したらスッキリ良くなる

ものと信じて疑わなかったわ』

 

という言葉が口癖

 

Aさんはある日、自宅にて

転倒し入院

 

 

あまりに膝痛が顕著な為、受診

してもらうと手の施し様がない

との事(動かす事すら不可)

安静臥床しているだけの生活に

なった

 

Aさんが現状をどこまで把握

出来ていたかは正直わからない

ですが、先日まで不自由ながら

に歩けていたのに、

 

一転寝たきり生活(それでも

は痛い)と生活が一変して

しまいました

 

理学療法どころの話ではないと

いう事でオーダーは出ず

 

Aさんに長年関わらせて頂いた

者として

 

『何が出来るだろうか。。。』

 

と考えた結果、定期的に顔を

見に行って話を聴く事にした

 

病棟にいる誰よりも私がAさん

の事に詳しいのだから

 

顔を見に行くとAさんは泣いて

いた

 

『何でこんな事になって

しまったんや。。。』

 

『人生はもっと良いものだと

思っていた。。。』

 

Aさんが泣く姿をはじめて見

私はどう声を掛けて良いか

わからなくなった

 

Aさんどうですか?やっぱり

膝は痛みますか?』

 

何とか声を振り絞った私に

Aさんは一言

 

 

『死ぬ薬ちょうだい』

 

返答する事なんて出来なかった

 

『そんな事言わずに。。。』

 

なんて事が言える訳がない

 

90歳という年齢まで痛む膝と

向き合いながらここまで生きて

来られたのだから

 

『ついこの間まで歩いていま

したもんね』

 

再度声を振り絞った私の

ケーシーを手で力強く掴み

 

『先生は幸せやなぁ、私も

歩きたい』

 

と泣かれました

 

あなたにとって幸せて

何ですか?

 

美味しい物を食べる事ですか?

 

大好きな異性と一緒にいる

事ですか?

 

旅先でゆっくり温泉に入る事

ですか?

 

私は食べたい時に食べたい物を

食べられます

 

まだ手を握ってくれる子供達が

近くにいます

 

旅行にだって行けます

 

でも誤嚥のリスクが高い人は

食べたい物も食べられませ

 

子供がいない、天涯孤独の

高齢者だっています

 

旅行どころか近所のスーパーに

さえ1人で行けない人も大勢

います

 

私達が当たり前だと思っている

事は全ての人に決して当たり前

ではないんですよね。。。

 

同時にもう1人私が過去に

関わらせて頂いたBさんの事を

 

思い出しました

 

悪名高い病院の前の道路で転倒

し動けなくなったBさんは

救急車を呼ばれ、車内で叫んだ

そうです

 

『●●病院だけは辞めて!!』

 

残念ながら●●病院に運び込

れたBさんに私が挨拶に行くと

泣かれていました

 

『私はここで死ぬんですね。。』

 

 

痛みで寝返りすらうてなかった

Bさんが寝返りをし、端座位に

なった瞬間、大粒の涙を

されました

 

『私起きれた。。。』

 

当時のBさんの心境はわかり

ませんが、Bさんにとって

『起きれる幸せ』を噛みしめて

いたのかもしれません

 

少なくとも私は一緒に喜びつつ

 

も『ここがゴールではない』と

冷静に考えていたと思います

 

私にとって起きれる事は当たり

前だからです

 

今一度考え直してみませんか?

 

仕事があるのは当たり前では

ない

 

朝朝ごはんが出て来るのも

当たり前ではない

 

家がある事が当たり前ではない

 

本を買える事は当たり前では

ない

 

歩ける事は当たり前ではない

 

生きている事は当たり前では

ない

 

 

あなたにとっての当たり前は、

誰かにとっての当たり前では

ないんですよ

 

Aさんに私が何が出来るのかは

わからない

 

もしかして出来る事はないかも

しれない

 

また泣かれるかもしれない

 

それでも顔だけは出しに行こう

と思っている

 

Aさんは会話なら出来る

 

 

例えチグハグな会話であったと

しても少しは気分が晴れるかも

しれない

 

一瞬でもクスッと笑えるかも

しれない

 

私でも何かのお役に立てるかも

しれない

 

1円もお金にならない仕事なの

は間違いない

 

でもAさんから学べる事はある

と私は信じている